【組織論コラム】藤川采配に学ぶ「解釈力」:リーダーが定義する“事実”が組織の出力を変える


センスメイキング理論で試合を制したTG戦

阪神・高橋遥人投手の5年ぶり完封勝利。

その裏側で、藤川監督が放った一言が、組織マネジメントの観点から非常に興味深いものでした。

「膝に当たったボールが一塁にいってアウトになった。運がこちらに向いていると感じた」

この「解釈力(センスメイキング)」が組織に与える影響を、3つの要素で紐解きます。

1. 「事実」を「意味」に変換する:センスメイキング理論

組織論における「センスメイキング(意味付け)」とは、不確実な状況において、リーダーが「いま何が起きているのか」を定義し、メンバーに納得感を与えるプロセスです。

  • 不都合な事実: エースの膝に打球が直撃した(=ピンチ、不運)。
  • 藤川監督の解釈: その結果アウトが取れた(=チャンス、幸運)。

リーダーが「これは幸運だ」と定義することで、ベンチ裏やマウンド上の**「動揺」を「高揚感」へと瞬時に書き換えた**のです。

組織のメンタルモデルをポジティブに固定する、極めて高度なマネジメント手法です。

2. 「不確実性」の受容とコントロール

ビジネスも野球も、計算通りにいかない「ノイズ(不運や事故)」が必ず発生します。

  • 硬直した組織: 「なぜ怪我をするような打球が飛んだのか」「守備位置は正しかったのか」と、過去の事実に固執し、原因を追求して足を止めます。
  • 藤川采配: 起きた事象を「有利な兆し」として即座に受け入れ、「完封まで行かせる」という意思決定の根拠に昇華させました。

この「起きたことはすべて正解」とする姿勢が、現場(バッテリー)に迷いを捨てさせ、113球完投というパフォーマンスを最大化させたと言えます。

センスメイキング理論のポイント

  • 「納得(腹落ち)」が最優先: 正解がない複雑な状況において、正確な分析よりも「この方向なら進める」という全員の納得感(意味づけ)を重視する。
  • レトロスペクティブ(後付けの解釈): 先に行動し、その結果や経験を振り返って「あれはこういう意味だった」と納得するプロセス。
  • イナクトメント(環境創造): 受動的に環境を分析するのではなく、行動を起こして環境を構成・変化させる。
  • 7つの要素: アイデンティティ、振り返り、実行力、社会性、進行中のプロセス、部分的認知、正確性よりも説得性、という要素で構成される。

3. リーダーの「楽観主義」が作る心理的安全

最終回、2死二、三塁の絶体絶命のピンチ。

ここで監督が「運がある」と言い切っている事実は、選手にとって究極のバックアップになります。

  • 信頼の委譲: 「運が味方しているなら、自分のボールを信じて投げるだけだ」という思考の単純化。
  • 結果への責任: 万が一打たれたとしても、「運を信じた監督の責任」という構図が(無意識に)成立し、選手の肩の荷を下ろします。

【編集後記】

「解釈」一つで、組織はバラバラにもなれば、一丸にもなります。

高橋投手の膝の痛みという「肉体的な苦痛」を、チーム全体の「勝利への確信」に変換した藤川監督。

これは、トラブル続きのプロジェクトを抱えるマネージャーにとっても、大きなヒントになります。

「最悪の事態の中でも、一つだけ起きたラッキーを見逃さず、それを勝機だと定義できるか」。

その一言が、組織の「レジリエンス(復元力)」を爆発させるスイッチになるのです。

皆さんは、仕事でのトラブルを「不運」と捉えますか? それとも「好転の兆し」と定義し直しますか?

#組織論 #マネジメント #センスメイキング #藤川球児 #高橋遥人

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